列車の動きってどういうことなんだろう
走らせて面白いレイアウトとは、列車の動きが面白い、楽しいということです。
では、それはどうやって考えたらいいのでしょうか。
このホームページのテーマは情景を作り込むことではないので、レイアウトパターン=走行パターンということになります。
情景を作りたい人は、走行パターンを決めて列車が走るようになってから、好きなだけ作り込んだら良いと思います。
列車の動きを考えてみる
まず列車の動きそのものについて、考えてみましょう。
飛行機なら旋回したり、上昇したり、コークスクリューのようなアクロバットな動きが出来ます。
車ならワインディングしたり、ドリフトしたり、平面空間上を自由に移動できます。
しかし、鉄道はそういう訳にはいきません。
列車は決められた線路の上しか移動できないのです。
つまり、動きとしてはかなりつまらない乗り物なのです。ちょっとがっかりするかもしれませんが、それが現実です。
では、そのつまらない動きしか出来ない制約がある乗り物をどうやったら、いろいろと動かせるかを考えます。
列車の動きは数パターンしかありません。動き方は決まっているのです。
走り出す、停車する、速度を変える、進行方向を変える、カーブやポイントなどでくねくねする。
以上です。これ以外のことは列車である以上できません。
空中に浮くことも、横にスライドすることもできないのです。
もともと動きのパターンが少ないのですから、できるだけ頻繁に数多く、これらのいずれかの動きを見せないと飽きてしまいます。
ここでオーバルのレイアウトがなぜお勧めできないのか、その理由がもうひとつ判明します。
円形の線路をずっと走っているだけでは、向きは変わらないですし、大きくくねることもないので、飽きてしまうんです。
特にきれいな小判型の場合には、カーブの角度も一定なので、毎回ほとんど同じような動きにしか見えず数回も回れば飽きてしまいます。
列車である以上、駅があって止まったり、引き込み線に入ったり、端まで行って折り返したりといったパターンを入れることはある意味必須です。
また、3線式の特長であるリバース配線についてもここで活かされます。
リバースを通過すると、編成全体の向きが反転します。
右を向いていた機関車は左を向き、手前の面が見えていた客車は隠れていた奥の面が見えるようになります。これが変化になり、あっちこっちに走っていく感を演出します。
実はただまっすぐ走っているだけなのですが、横から見ていると右に行ったり左に行ったりという往来を表現することに、リバースはとても役に立ちます。
動きのパターンは少ない列車ですが、鉄道ならではの動きというのがあります。
それは、すれ違い、追い越し、併走です。
飛行機は曲芸飛行でもない限り、単独で飛んでいます。
車も数は多いですが、組みで走ることは少ないです。
しかし、鉄道は全体が巨大なダイヤで構成されているため、複数の列車同士がすれ違い、追い越し、併走する醍醐味があるのです。
東京駅のホームに立っていると、次から次に列車が走って来ます。
1本1本の列車はランダムに来るのではなく、15秒単位で決められた正確なパターンダイヤに沿って走っています。
しかし乗客の視点から見ると、まるで生き物のように列車が重なり合って複雑な動きに見えます。飽きないで見ていることが出来ます。
これを実現するためには、レイアウト上を複数の列車が同時に走っていることが必要です。
東京駅とまでは行かなくても、2台、3台でも、1台しか走らないレイアウトとはずいぶん複雑さが違って感じられます。
5台も走ればもう十分複雑で、いろいろなところを見て楽しんでいられます。
おそらく3台くらいからは、設計した人でも完全に動きを想定しきることはできないと思います。
ひとつひとつの動きは当然わかっていますが、実際に走らせていると、ある時は密になって駅に入ってきたとか思うと、ある時は離ればなれになっていたりと、ああこんな風に見えるときがあるんだという発見をすることができると思います。
それが鉄道の動きなのです。
基本的な走行パターン
レイアウトには鉄道らしい動きをいくつか取り入れていくことになります。
線路の形によって取り入れやすいパターンと、難しいまたは不可能なパターンがありますので、最初に決まったレイアウト設置場所に合わせて検討することが大切です。
基本形1:シャトル
シャトルはCS2でも簡単に実現できる基本パターンのひとつです。
ある地点からある地点までを往復します。
「往復する」ことよりも、減速して停車した後に『向きが代わり』また加速して走り出す、という流れが肝心です。この速度が変化して向きが変わる点が見せ場です。
駅で止まってもいいですし、引き込み線でもいいですが、想定した場所によってストーリーや見え方は変わります。ストラクチャーがなくても、客車なら駅かなと想像できますし、貨車なら入れ替えかなと思ったりします。
折り返しまでの停車時間が長ければ終着駅のような感じになりますし、短いと入れ替えかスイッチバックのようですね。
基本形2:駅で止まって発車
走っていた列車が止まって、また走り出すという動きです。
直線で止まるのか、カーブなのかによっても見え方は変わります。
また、待避線の部分で止めて、隣の列車が同じ向きに走り出す場合と、隣の列車は逆向きに走り出す場合では、想像できるシーンは変わってくると思います。
さらに支線の列車が走り出していく。駅前に止まっていたバスが走り出していくなど、列車が止まる場所には様々なシーンやドラマが連想されます。 単線でお互いに向かい合って走ってきて、駅ですれ違って、また別々の方向に走って行く、なんていうのもいいですね。
基本形3:列車が入れ替わる
1つの列車が引き込み線に入って別の列車が出てくる。
トンネルに入ったと思ったら別の列車が出てきた。
駅に停車して、別の列車が動き出す。
ずっと同じ列車が走っているのではなく、走っていた列車が止まって、止まっていた列車が走り出すというパターンです。
車庫のような場所かもしれませんし、様々な列車が行き交う情景を表現することかもしれません。
レールの配置を考えるのではなくパターンを考える
最初に書いたように、列車の動きのパターンは少ないので、実は基本形はこの程度しかありません。
単純ですが、これを組み合わせて複雑な動きを作り出して行きます。それが『レイアウトの設計』なのです。
メルクリンの場合には、レイアウトは線路のパターンと配置を考えるだけではありません。
その上でどんなパターンで走らせるかによって、全然違う情景になります。
ウインド・ストリートは棚の中にありますが、走行パターンを何通りにも切り替えられるようになっています。
1台ずつ複雑な入れ替えをする走らせ方も出来ますし、同時に3台の列車を交替しながら往復することも出来ます。それらを途中で切り替える複合パターンなんかもあります。
窓際のように単純な直線が1本だけしかなくても、途中で止まったら、前後どちらに進むかは2通りです。
また、その直線が2本並んでいて、互いのパターンがずれていたら、全く同じ動きにはなかなかならないものです。
さらに前進の時には警笛を鳴らすとか駅の放送が入るとか、音やアクションを入れることで、ぐっとレイアウトの幅が広がります。
これが2つの列車がただ、シャーシャーと一定速度で往復していただけなら、すごくつまらないです。
基本パターンをどのように組み合わせるかが、応用と腕の見せ所ではないかと思います。
応用パターンの例
基本パターンを単純に組み合わせただけでも、かなり面白いレイアウトはできます。
リバースのあるレイアウト
これは友達の階段下のデッドスペースのレイアウトです。
彼はモデラーとして一流の腕があるので、私なんかよりもずっとセンスのある小物を配置してインテリアとしても完璧なレイアウトではないかと思います。
2台の列車が走るだけなのですが、リバースが2つクロスされていることにより、ぐるぐる走っている列車の向きが変わったり、こっちからあっちへ、あっちからこっちへと斜めに横断するので飽きません。それにたまに引き込み線に入って停車して、また出発します。
可愛い小さなオーバルに走っている小型の列車も、ずっと走り続けているのではなく、止まったり向きを変えたり、電気と音が消えたりします。
町の情景と合わせてとても素敵です。
四角いオーバルを元に、パターンとしては基本形2しか使っていないのですが、これだけでもかなり楽しいレイアウトですね。
たくさんの列車が走るお座敷レイアウト
同じ友達の別の部屋に、私が遊びに行ったときにお座敷で組んだレイアウトがこちらです。
お座敷レイアウトですので、いつもここにあるのではなく、当日組んで遊んで片付けるというものです。
それでも、これだけの列車を走らせることが出来るのが、メルクリンのメリットです。
最初はいろいろな列車を走らせていたのですが、途中から友人がコレクションをしているクロコダイルという機関車だけで統一して走らせてみようということになり、『クロコダイル祭り』と名付けてシリーズを全部走らせてみました。
全く同じ機関車ですが、年代によって形も機能も様々で、歴史を見られる博物館のような遊びが出来ました。
この形は基本形の1~3すべてを使っていますが、ただ単純に組み合わせただけです。
最外周はスターターセットの形そのものですが、その中に別のパターンを敷き詰めることによって、東京駅のような次々に列車が走ってくる感覚が味わえます。
オーバルの真ん中の空間を活用したパターンです。
この形は簡単にできてお座敷向きなので、いろいろな場所で組んでいます。
X字型の入れ替えレイアウト
こちらはとても狭いスペースに3列車も走らせてしまうレイアウトです。
引き込み線が4つあり、列車は3台。
空いている引き込み線に向かって、それぞれが交互に移動します。
スペースは全くないけれど、できるだけ多くの列車をなるべく飽きないように動かすレイアウトです。
この大きさだと情景を作り込もうという意欲も沸くかもしれませんね。
ただし、小さいからと言っても、決して設計は簡単ではありません。
信号機もセンサーも4つ組み込んでいます。
シャトルと信号機を組み合わせているので、メモリーの使い方の練習にもなるプランです。
デッドスペースを華やかに変えよう
さて、あなたの建設用地はいかがでしょうか。
変な形だからこそ、列車にとっては楽しい沿線になるのかもしれません。
いくつかのパターンを紹介しますので、ぜひいろいろ考えてみてください。
それから最後に、レイアウトは最初の1回ではだいたいうまく行きません。
走らせてみて、もっとここをこうしたい、ここはこうした方が良かったという点が出てきます。
メルクリンではレールが簡単に取り外しできるので、走らせながら何回かレール配置を変えて試してみてください。
試行錯誤が必要なのでレールを固定したり、バラストは撒かない方がいいです。
納得いく形になっても、何年かしたら、また変えたくなるかもしれません。そんな時にもCトラックなら、ぱっと1日で変えることが出来るのです。