メルクリンのアナログ運転を見てみよう

3線式のアナログレイアウト

メルクリンは歴史が長い製品です。私が始めたときにはすでにデジタル全盛でしたが、その前にはアナログの時代がありました。
アナログ鉄道模型と言うと、日本ではNゲージが代表的です。しかし、アナログでも3線式はできることが全然違っているのです。
現代ではアナログ3線式の鉄道模型を見ることはほとんどないと思います。
しかし、メルクリンのことを本当に知るためには、アナログ時代から脈々と続いている設計思想や仕組みについても知っておいた方が理解が深まります。

私は友達にアナログ時代からメルクリンをやっている人がいたので、ある機会に昔のメルクリンを実際に見せてもらいました。
昔から遊んでいる人にとっては当たり前のことでも、私にとっては新鮮で衝撃的でした。
せっかく貴重な体験をしたので、その時の記録を掲載したいと思います。

Mレール

これはCトラックになる前の初代のメルクリンのレールです。Mレールと言うそうです。
道床までしっかりと金属で出来ていますが、意外なことに頑丈さは今のCトラックの方があるように思います。
Mレールは踏んづけると曲がってしまいます。金属でも案外柔らかいということですね。

コンタクトレール

すごいなと思ったのは、この時代からちゃんとセンサーレールが存在していたことです。
方式は現在のコンタクトセンサーと同じです。
2組のうち片方のレールが切れていて、列車が通過すると車輪で導通する仕組みは変わりません。
この仕組みは3線式のセンサーの原点ですね。

コンタクトの区間はかなり短いです。アナログ式の時にはセンサーが感知してから動かす仕組みも単純だったので、ただ列車が来たことを検知すれば良かったようです。
リード線を繋いで信号機などに接続します。

センターレール絶縁と信号機

信号機のところでセンターレールを絶縁するのも今と同じです。というか、今も昔と同じですね。
Mレールでは赤い絶縁キャップではなく、単なる紙を挟んで絶縁します。そこらへんにある厚紙で良かったそうです。

センサーと信号機を繋いで遊ぶレイアウトは、当時から標準的なものでした。

昔から信号機で列車を止めることが出来た

信号機を赤にすると列車が止まるというのは、昔から出来ていたんです。これは凄いなと思います。
たぶんここに写っている機器は、私とほぼ同い年か、ひょっとすると生まれる前の機器です。その当時から信号機で止められたわけです。
私は小学生の頃にNゲージを始めましたが、少なくとも当時のNゲージでは信号機では列車は止められなかったと記憶しています。

それに、これらの機器がまだ普通に動くというのが本当に凄いことです。
見るからに年代物ですが、箱から出して普通に動きました。
※機関車は現代の製品(mfxデコーダー搭載機)です。

せっかくなので動画でどうぞ

基本運転編。

自動運転編。
こんな時代から自動運転が出来たのです!!
コントローラーにはノータッチです。だから今のCS2の操作方法があるのだと思います。

脈々と受け継がれる走行性能と互換性

さて、本当に驚いたのは、実は友達の家から帰ってきてからです。
私も今の製品で自宅でアナログレイアウトをやってみました。
もうデジタルなのになんで?と言われましたが、私にはアナログはかえって新しく見えたので、試してみたかったのです。

現行製品をアナログレイアウトでそのまま走らせることが出来る

現在発売されているmfxの列車は、そのままアナログのレイアウトで走らせることが出来ます。
実はCVの設定を変えると、アナログレイアウトで有効にするファンクションを選択できる列車もあったりします。
mfxはデジタルだけの機関車ではなくて、アナログでもきちんと走るよう互換で設計されている製品なのです。
メルクリンはきちんと互換性が担保されているのです。昔にレイアウトを作った人も最新の列車でそのまま遊べます。

アナログの列車をデジタル対応するにはレトロフィットキットが発売されている

一方で、アナログ時代の列車をデジタルで走らせるためのレトロフィットキットも発売されています。
列車の中のモーターやデコーダーといった機器を交換してデジタル化します。
すべての列車に対応しているわけではありませんが、ハードウェアもアップグレードできる用意はされているのです。

Cトラックとデジタル信号機はアナログレイアウトでも使える

レールや信号機も現在の製品でも、ちゃんとアナログレイアウトで動きます。
Cトラックでアナログ運転ができるということです。

しかし、現代ではすでにアナログトランス(交流用)やスイッチ類が手に入りません。
私は非常にラッキーなことに、個人輸入したときにセットに付属していたアナログトランス(交流用)を持っていたのです。持っていたというか、その機器がなんなのかわからなくて、そのままにしていたところ、今回の友達に教えてもらいました。
「それトランスじゃん。持ってるやん!」
え、そうなの。これが交流トランスかぁ……。

アナログ信号機は手に入らないので、中古屋さんに行ったところ、たまたま出物があって売っていました。
出物というか、完全にジャンク品扱いでお店の人も困っていたようです。
ついでに大昔の機関車も買いました。デジタル化できないので、これは友達に頼まれて買いました。
買ってからわかりましたが、機関車は私が生まれる前の製品でした。後日オーバーホールして走ってました。すごい!
店員さんには何回も「3線メルクリンですよ。動作保証なしですよ」と言われました。それでいいんです!

信号機のスイッチだけは手に入らなかったのと、新規に買うのはもったいなかったのでサーキットレールで代用しました。
押している間だけ通電できるタイプのものでないとだめです。

こうして、私の自宅でもアナログ運転が出来るようになりました。
そして実際にやってみたところ、様々な新発見がありました。

まずは、現行製品のmfx機関車が、そのまま普通にアナログレイアウトでも走る動画です。

続いて、信号機は昔のアナログ時代の製品でも、現行のデジタル製品でも動くという動画です。

列車の向きは『列車が』変えている

メルクリンはアナログでも、列車ごとに進行方向を好きな方に向かせることが出来ます。
レールの電圧を変化させているので、レイアウト上のすべての列車が同時に動いてしまう点は同じです。しかし、列車が走る向きは、自分で好きな方向を決められるのです。

Nゲージなどの2線式のアナログ鉄道模型では、列車の進行方向を決めているのは『コントローラー』です。コントロールノブを回した方向にすべての列車が進みます。
しかし、メルクリンでは列車の進行方向を決めているのは『列車そのもの』です。
この列車は右向き、この列車は左向きと決めておけば、その向きに走り出します。
したがって、アナログ運転でも正面衝突や追突が発生します。

アナログのメルクリンでは架線集電ができます。
ということは、架線集電と線路集電で別のトランスにしておけば、アナログ式でも同一線路上で別々の向きと速度で列車を走らせることができるということです。
いやむしろ逆に、同一線路上で別々の向きに走ることが出来るように架線集電があると言い換えることも出来ると思います。

こうして考えると、デジタルでは線路だけで自由に各列車を制御できるようになったのだから、架線集電ができなくても問題がないことがわかります。
※デジタルでは電力以外に信号を安定して受信するために、架線集電走行にはシステム側が対応していません。
見た目としてパンタグラフがちゃんと架線と接触してリアルに見えれば良いんですね。
なんかいろいろなことが繋がっていくというか、見えていく気がしました。

実際にやってみたので動画でご覧ください。

最後に信号機の切り替えだけで行う運転です。自動にするにはちょっと配線機器とかが足りなくてできませんでした。
それでも信号機のスイッチだけで運転できるのは、昔も今も同じです。

CS2でできることには、デジタルだからできるのではなく、メルクリンだからできること、昔からできていた当たり前のことがいくつも含まれています。
CS2の中にも脈々とメルクリン・コンセプトのレールが繋がっているのです。
まさに温故知新。この体験が出来たことで、個人的には、この先の未来もメルクリンが進化し続けていくことを確信できたと思います。