ハンダは流して接着する
ハンダ付けすると聞くと『なんだか難しそう』と感じる人は多いのではないかと思います。私もそうでした。
しかし、ハンダはやり方さえ知ってしまえば簡単で、とても便利なものです。
金属ですので強固な力で確実にくっつきます。引っ張った程度では離れないので配線でも安心です。
また取り外したい時にも簡単に元通りに外すことが出来ます。一度くっつけたらおしまいの接着剤よりも優れています。
世界中で電子工作にハンダが用いられている理由もわかります。それほど便利なものなのです。
ハンダ付けは誰にでも出来ます。
実際に私は文系の学部を出ている人間で、メルクリンで必要に迫られるまではハンダを買ったこともなければ、付けたこともほとんどありませんでした。
中学校の技術の授業以来だと思います。授業で習ったとは思うのですが覚えていないので、いちからプロに教えてもらいました。
教えてもらった人は、職業としてハンダを実際に付けた経験がある人です。
その結果できるようになりました。意外と簡単でした。
いまでは、チップ実装用のLEDなども自分で付けることが出来るようになりましたし、メルクリン関係のドイツの電子キット商品を買って自分で組むことも出来ます。
K84デコーダーは純正品は1個15,000円くらい(m84で1万円以下になった)していましたが、Viessmannの互換品のキットなら5,000円~6,000円程度で済みます。私はK84は多用していたので、ハンダゴテ代くらいは十分元を取ったと思っています。
自分でできるようになってから気が付いたのですが、一般的にハンダが難しいと思われている理由は2つあると思います。
(1)使っているハンダごての性能が低い
(2)難しい付け方をしている
つまり、ほとんどの場合「スキルの問題ではない」ということです。
(1)ですが、ハンダごてには様々な性能のものが販売されています。
初心者ほど「安くて簡素なものでいいや」と思って、数千円程度までのものをホームセンターで買っているのではないかと思います。
誤解を恐れずに書いてしまうと、安いコテはプロ用です。スキルがあれば安いコテでも付けられますが、スキルがない人は道具の性能を上げれば不足しているスキルは道具がカバーしてくれるので付けられるようになります。
とにかく高性能のハンダごてをお勧めします。それでだいたいのものは失敗せずに付けられるようになります。
私の言う高性能のハンダごてとは、
・短時間(数秒程度)で温度が上げられる
・温度の指定(350度など)が出来る
・設定した温度をずっと維持できる
・コテ先と本体が分離できるか別パーツで離れている
・専用のコテ台も付属していて安全性も高い
といった機能を備えたものを指します。
私が使っている機種は下の画像のもので「HAKKO FX-888」という機種です。
上記のすべてを備えています。この機種はすでに生産終了していますが、後継機種(2014年7月現在ではFX-888D)が発売されています。
お値段は実売価格で2万円程度です。
(2)ですが、こちらはどの付け方が『正しい』とは判断できないのですが、私がプロから教えてもらったやり方でないやり方をしている人やホームページなどもあります。
私が教えてもらったやり方は手順が多い(と言っても3手順ですが)のですが、ほとんどのものを確実に簡単に付けることが出来ます。
付け方については、まずハンダの基本知識を知っておいてほしいです。
ハンダは接着剤ではありません。ただの金属です。
金属を熱して溶かしている間に、くっつけたいもの同士を接触させます。そして、また冷ますと金属に戻るので、接触していたものが金属で固められて離れなくなるという仕組みです。
この仕組みを知っていることがとても大事です。細かいことはわからなくても、糊のようなものではないということだけを理解してもらえれば良いです。
ですので、正確には『ハンダを付ける』のではなく、『ハンダという金属を溶かして流し込んでから、また冷ます』という行為が『ハンダ付け』という作業になります。
ハンダゴテは接着する道具ではなくて、ハンダという金属を溶かすために、付けたいものの接着部位を熱するための道具です。
このため、ハンダ付けは以下の手順で行います。
AとBをくっつけたいとします。
ハンダ付けの手順
(1)物体Aをコテで熱してハンダを接触させて流しておく。
(2)物体Bをコテで熱してハンダを接触させて流しておく。
(3)ハンダの付いた物体Aと物体Bを接触させて、接点を熱してお互いのハンダを溶かして繋ぐ。
どんなものでも、基本的にはこの3手順です。
3つ以上のものを付ける時にも同じです。各物体にハンダを流して(乗せて)おいてから、それらを接触させた接点を熱して溶かして、また冷まします。
つまり、ひたすら熱してハンダを流すことを繰り返すだけで、接着行為はしないのです。ここがポイントです。
ハンダゴテはハンダを溶かすためにあるのではなく、くっつけたい物体を加熱することが主目的なんです。
※コテでハンダを溶かす時はくっつける最終段階と外す時だけ。
ハンダゴテでは接着したい部分を熱します。そこにハンダを接触させると『加熱されている部分に』ハンダが溶けて流れ出します。
まずこうして接着したいすべての部品にハンダを付けるのです。そうしておけば、最後にハンダが乗っている部分を合わせてコテでハンダを溶かしてから冷やせば、綺麗に固まってくっつきます。
この手順を踏む限り、コテは必ず利き手で持ち、反対の手にはハンダまたはくっつけたいものを持つだけの動作で、必ずくっつけることができますので、手の数が足りなくなったり固定が難しくなったりすることはありません。
単純作業の繰り返しをするだけで、確実にハンダ付けが出来ます。
なぜ高性能のコテが必要なのか
高性能のコテがどうして必要なのかも、この点と関わりがあります。
熱する物体を短時間で適切な温度にしないと、その物体が熱で破壊されてしまうことがあります。電子部品などは特にそういう危険性があります。
素早く短時間で適温に持って行くためには、数秒で熱することが出来て、その温度を維持することが出来るコテが必要になります。
安物のコテでじわじわと熱を加え続けると、長時間加熱されてしまいICチップ等が壊れてしまう危険性が高くなるのです。
また物体ごとに適温が異なるために、それぞれ温度調整が出来るコテが便利です。
例えばCトラックの端子は、私の経験上350度~400度くらいがさっと作業が出来る適温です。
物体は様々な形状をしています。レイアウト上などで付ける場合には、動かせない場合もあります。
コテ先が軽くて可動範囲が自由になるためには、コテの本体加熱部とコテ先は分かれていた方が良いです。
コテ先はある程度消耗品なので、分かれていれば最適なコテに交換も出来き、壊れてもその部品だけを買えば良いので結局は便利に長く使えます。
温度指定が出来ない安いコテでは、あらかじめ適温がいつになったら出せるのかと、その温度を維持するスキルが、ハンダを付ける人間側に求められます。水を浸したスポンジなどで適切な温度維持が出来るスキルがある人が使いこなせる道具だと、私は思っています。
CS2と似ていますが、高性能ハンダゴテは「350度」と本体のパネルで指定したら、数秒で350度ちょうどになり、その後もずっと350度ちょうどが維持されます。この性能差は素人ほど、結果に非常に大きく跳ね返ってきます。
レイアウトを作り始めると、ハンダ付けはどうしても必要になります。
たくさんの数を付けるので、どうせなら良い道具を使った方が間違いがないです。他はケチってもハンダゴテだけはケチらない方が鉄道模型では絶対にお得です。
ハンダを付ける
実際にハンダを付けてみましょう。
私が付けているところをビデオに撮りましたので、実演をご覧ください。
これは文系出身のド素人だった人が付けている映像です。
コンタクトセンサーを作るために、中央を切り離してあるCトラックにリード線を付けます。
最初にプロの人が教えてくれた時に、その作業を見ていて『これは難しそうだ』と、私は率直に感じました。
しかし、いま自分で撮影したビデオを見ていると『いつの間にか自分にも出来るようになっていた!』という感動があります。
高性能のコテと3つの手順を守れば、見た目以上に簡単にできます。練習すれば誰にでもきっとできるので大丈夫です。
ハンダを外す
付けたハンダは外すことが出来ます。
私はずっとハンダは一発勝負で失敗したらおしまいだと思い込んでいました。
それは間違いです。
ハンダは失敗しても何度でもやり直すことが出来ますし、一度付けてしまっても、ほぼ元通りに外すことができるのです。
可逆なのです。そういう意味では接着剤よりも優れていると言えます。
私がハンダを外しているところの実演動画です。
外すのは非常に簡単で、ただ接点を熱するだけです。
再びくっつけるのならハンダは残しておいた方が便利なのですが、元に戻したい場合や失敗した時には、ハンダ吸い取り線という道具を使うと元に戻すことが出来ます。
下記の動画も参考にしてください。