メルクリンのための工作道具
鉄道模型には工作は付きものです。
買ってきたものをそのまま組み合わせて遊ぶだけでも十分楽しいですが、少し何か工夫したり、配線を必要とするような場合には工作が必要になります。
また、工作をしなくても、日頃のメンテナンスや整理に関して、あった方が便利という道具もあります。
実は道具は大変重要です。
私は文系の学部を出ている人間で、電気工作に関しては知識も少なく経験もほとんどありませんでした。中学校の時に授業でラジオを組み立てたりした程度です。
ところが今では、秋葉原で買ってきたチップ実装用LEDを基板にハンダ付けしたり、ドイツ語の鉄道模型機器の電子キットを組み立てられる程度のことはできるようになりました。
ある程度の回数をこなして練習もしましたが、できる/できないはスキルではなく『道具の性能』によるところが大変大きいと実感しています。
昔は職人的なスキルが要求されることも多かったのかもしれません。しかし今日では、よほど特殊で専門的なことを除いては、道具があれば素人でも趣味レベルの工作ではかなりのことができます。個人的な感覚では成果の8割は道具のおかげ、残りの2割がスキルくらいの比率です。
どんなことでも初心者は入門用の製品が良いと言われたりしますが、時と場合によると思います。道具に関しては、初心者ほど良い道具を購入した方が良いです。
鉄道車両よりも道具にお金をかけるんだ程度の感覚で良い道具を買えば、鉄道模型以外にも使えますし、「できた!」という成功体験が重なって、結果的にモチベーションが沸いてスキルも向上します。逆に言えば、スキルを身につけた人だけが安い道具でもなんなとかなるというのが本音です。
入門段階から活躍する道具
スターターセットを組み立て遊んだり、お座敷レイアウトで線路を組んで走らせるような時にあると便利な道具です。
ピンセット
ピンセットは細かいものを摘む器具ですが、実はハンダ付けの時に使います。
ストラクチャーの製作にも使いますが、それ以上にハンダ付けではあるとないでは大違いです。表面実装のような細かい部品を付けるには、ピンセットの有無が成功率をかなり左右します。
どうでもいいことですが「ピンセット」はオランダ語です。
ピンセットには大きく分けて2種類があって、摘んだら先が開くものと、摘んだら先が閉じるものです。普通のピンセットは後者ですが、ハンダ付けでは前者も活躍します。
特に高価なものではなくも良いと思います。一番使いやすいのはメルクリン純正のツールキットに入っているものでした。プラモデル用のものを使ったりしましたが、メルクリンにはメルクリン製が一番でした。さすが!
ハンダ付けの時には、写真のような専用の第3の手になる支え工具も販売されていますが、ピンセットがあればたいたいは事足ります。
ドライバーセット
ドライバーはどの家庭にもだいたいはあると思いますが、メルクリンではどちらかというと、精密ドライバーセットが必要になります。
安価で揃うセットも多いのでひとつはあるといいと思います。
こちらもメルクリン純正のツールセットが使いやすかったです。
純正のツールセットになくて、あると良いものは、ポジドライバーです。
一見、プラスのドライバーなのですが、よく見るとプラスの角にさらに細い溝があって、8角形の星形をした特殊なドライバーです。
このネジはメルクリンの車両の台車を外したり締めたりするときに使います。
普通のプラスのドライバーで回すと、ねじ山をつぶしてしまうことがあるので、1本はポジドライバーがあった方が良いです。
パソコン用のセットなどには含まれているものもありますので、そういうドライバーセットも良いのではないかと思います。
カッターナイフ
普通に家庭にあるもので十分です。
でもないと困ります。ひとつは用意しましょう。
はさみ
これもないと困るので、ひとつは用意しましょう。
注意点はなんでもはさみで切っていると切れなくなってくることです。
はさみに応じて、布用、紙用と分けておいた方がいいでしょう。
グラステープ
模型用品店で手に入ります。
テープですが、しっかりとくっついて簡単に剥がせます。
ブレーキモジュールや信号モジュールをはじめとして、配線をCトラックに貼り付けて固定するのに向いています。
もちろんこのテープでなくても良いのですが、ビニルテープ等で貼っておくと長い間にべたべたになってしまっていることがあります。
ひとつあると便利だと思います。
ヤスリ
削って滑らかにする道具ですがメンテナンスにも使えます。
削るためにはプラモデル用のセットがあれば十分だと思います。
メンテナンス用には、Cトラックのセンターレールを磨くために、このような歯ブラシ型のヤスリが大変便利です。
ヤスリの幅がHOのレール幅にぴったりで、Cトラックの上を滑らせるだけでセンターレールの研磨が出来ます。
長い間使っていなかったレールでも、たいていの集電不良はこれで一発で直ります。
または、ガンプラコーナーなどで簡単に手に入る、こちらの「タイラー」という商品でも大丈夫です。
本来はガンダム等のプラモデル用なのですが、これも幅がHOのレール幅にぴったりです。
タイラーは使い捨てで3個で250円くらいです。
タイラーは使い捨てなので何回も使うのであれば、ちゃんとしたヤスリがあった方が結局は安く付きます。
歯ブラシタイプのものは、やはりCトラックのレール幅に収まりますので、軽く撫でる程度に触れば集電不良は回復します。ゴシゴシとこする必要はありません。
接着剤
接着剤は大変ポピュラーでどこの家庭にもひとつはあると思いますが、とてもノウハウがあるので一番奥が深くて知識が必要な道具です。
接着剤は実にたくさんの種類があります。
くっつける対象と用途によって、最適なものを選択することが出来るようになると、とても便利に使うことが出来ます。
「しっかりくっつけたくて二度と離さない、もう結婚したい」みたいな時には、それ専用の接着剤が最強です。
木材には木工用ボンド、塩ビには塩ビ用接着剤といった具合です。
自動運転レイアウトAltair Hermitageの土台には塩ビパイプが使われていますが、これは塩ビ用接着剤で接着しています。そう、ネジ止めではないのです。
しかし塩ビ接着剤は大変強力で、数滴垂らしただけで私が台の上に乗ってもびくともしません。安心して車両を乗せられます。
よく見ると黄色いテープがしてある部分がありますが、これは仮止めのテープです。ここの位置に止めようと目印で付けていたものなのですが、テープがない部分を接着しただけでびくともしなくなったので、外すのが面倒でそのままにしてあります。
ストラクチャーの製作にはプラモデル用の接着剤です。
流し込みタイプが便利です。すっと流し込んでやるとぴったりとくっつきますので、薄いプラスチックでも安心です。
専用接着剤はそれほど強力なのです。
しかし鉄道模型でも、実生活と同様に「適度に付き合いたい。いざとなったらやり直したい」という接着対象があります。
フィギュアを車両に乗せたいとか、ストラクチャーを仮留めしたいとか、そういう時です。
例えば、この貨車には和食やボーカロイドのフィギュアが乗っています。
これらはプラスチックですが、木工用ボンドで接着してあります。
こうすると、いざとなったときにはぱりぱりと剥がすことが出来ますし、洗えば綺麗にすることもできます。
七輪の上のサンマも止めていますが、少し触っても大丈夫で見た目も綺麗です。
ラベルプリンター
シールを作れるラベルプリンターです。キングジム社の「テプラ」などが有名です。
リード線の種類を明記するのに使ったり、レールの種類をCトラックの裏に貼ったり、いろいろなシーンで活躍します。
意外と知られていませんが熱収縮チューブのカートリッジとかもあって、専用機ならではの利便性を発揮します。
パソコンから印刷できるタイプが便利です。
中級者くらいから活躍する道具
センサーレールを設置したり、室内灯やストラクチャーにLEDを組み込んだり、ちょっとした工作が必要な時にあると便利な道具です。
ハンダとハンダゴテ
これはHAKKOのFX-888という機種です(※現在は後継機が発売されているようです)。高いです。2万円以上します。ただし性能は抜群です。
私はこれで「やる気が出て」表面実装の部品まで付けられるようになりました。色もなんだかかっこいいですし。
鉄道模型ではハンダゴテはかなり使用します。特にレイアウトを作るようになると相当な回数のハンダを付けますので、将来的にも何回使ってもストレスがない良い物がいいと思います。
このハンダゴテのポイントは「温度調整が出来ること」と「電源部とコテが分割されていること」の2点です。
温度調整が出来ると、部品によって最適な温度でハンダを流し込むことができて楽になります。特にこの機種は素早く指定した温度になり(数秒程度)、かつ、その適温を維持してくれますので、非常に作業がやりやすいです。
高い温度のままでコテを維持できると、ハンダ付けをする対象を素早く熱くすることが出来て、ハンダがすっと流れてくれます。
コテ台もしっかりとしているので簡単に倒れたりすることはなく、安全・安心だと思います。
電源部とコテが分離されていると、全体の電源コードが長くなって、ハンダを付けるその場所までハンダゴテを持って行きやすくなります。
レイアウトを作っていると、机の上でハンダ付けできないものが出てきます。そんな時にはレイアウトの上までハンダを持って行く必要があります。
コンセントから遠い場所もあるのですが、このコテなら取り回ししやすいです。レイアウトの台の上に電源部を置いて、そこからコテをさらに伸ばすこともできます。
下記の動画と記事も参考にしてください。
次はハンダです。
ハンダにはいろいろなタイプがあります。
鉄道模型用というのはたぶんないので、「電子工作用」と書かれたものを買います。
用途によってハンダの成分が異なるようですが、メルクリンでは「電子工作用」のハンダで問題ありません。
ハンダはたくさん使いますので、ロール巻きタイプである程度の量を買っておいた方がいいと思います。
ハンダ吸取線
ハンダを吸い取る金属線です。
この存在を知るまではハンダ付けは一発勝負と思っていたので、とてもドキドキしていました。
でも、実はハンダは何回もでもやり直しが出来るのです。もし失敗してしまっても、この吸い取り線でハンダを吸い取ってなかったことに出来ます。神様のような道具です。
ワイヤーストリッパー
ワイヤーストリッパーとはちょっとセクシーで魅惑的な名前ですが、リード線の皮を剥く機械です。
台所用品の皮むき器と同じで、どうしてもなければならないかというと、ニッパで代用できます。私もずっとニッパでリード線を剥いていました。
しかし、一度使ってしまうともう戻れません。ハンダと同じで、レイアウトを作るためにはかなり大量のリード線を加工します。
ワイヤーストリッパーを使うと簡単に安定してどんどんリード線が出来るので、作業効率はかなり向上します。
写真はヴィッセルというメーカーのものですが、太い線向きですごく細い線は剥けません。太い用と細い用と2つあった方が良いと思います。
握るだけで線が剥けてしまいます。一度使うと病みつきになるくらい便利です。
でも節約するなら不要かもしれません。
ニッパ
これは大事な道具です。ハンダゴテと並んで最重要だと思います。
プラモデルを作ったことがある人なら一度は使ったことがあると思いますが、大事なのはプラモデル用では鉄道模型には不向きであるということです。
プラモデルはプラスチックを切りますが、鉄道模型では金属をがんがん切断する必要があります。
レールも切断しますし、太さのあるリード線も切断します。プラモデル用を使用すると刃が欠けます。
ですので、必ず金属を切断できると書いてあるニッパを購入してください。
写真のニッパはバーコというメーカーのもので、とてもしっかりしていますが、意外と取り扱っているお店が少ないです。
ホームセンター等ではなく専門店で取り扱っています。
切れ味は最高で、メルクリンのCトラックのセンターレールもばちんばちんと切れます。センターレールを加工する場合には、必需品と言ってもいいと思います。
こちらはバーコ製ではないですが、刃先が細かいタイプです。
コンタクトレールを作るときに裏側で左右のレールを切断するのに使います。
センターレールの切断と左右のレールの切断とで、使用するニッパを変えていることがポイントです。
ミュージアムジェル
これは接着剤ではないのですが、軽く(といっても揺れても取れないくらいで)ものを固定するためのジェルです。
名前の通り美術品の固定に使われていますし、耐震用品としても効果があります。
ジェルと言ってもかなり固めのゼリーのような感触です。少しだけちぎって対象物にガムのようにしてくっつけておくと、固定しておくことが出来ます。
使用する量はほんの少量で良いです。時間が経過するとジェルがだらりと垂れてくるので、少々不安になるくらい少しの量で固定しておきます。
接着剤ほど強力には付きませんが、その代わり、いつでも自由に剥がすことが出来て汚れたりもしません。耐震用にフィギュアやストラクチャーを固定するのにも便利です。
シリコンスプレー
工作というよりはメンテナンスに必要な用品です。
ポイントなどプラスチックの可動部分に吹き付けると動きが滑らかになります。
金属に吹き付けるクレ556のプラスチック版だと思ってもらえれば結構です。
サーキットレール、3分岐ポイント、ダブルスリップポイントには吹き付けておくと良いでしょう。
各種グリス
接点グリス、セラミックグリス、モリブデングリスです。
これはメンテナンス用品ですが、中級の頃になると、そろそろメンテナンスが必要な車両も出てくるかもしれないので、こちらの項目に書きました。
用途に応じて導電性能やすべりを良くします。
シューに接点グリスを付けると、集電性能が良くなりますが制動距離も若干伸びるので、ブレーキ位置を調整するときには注意しましょう。
上級者向けかもしれない道具
固定式のレイアウトを作ったり、台やストラクチャーなどを自作する場合など、本格的な工作にあると便利な道具です。
デザインナイフ
模型店で手に入る小さなナイフです。
細かいところを切ったり、ストラクチャーの製作に使います。
1本あると便利です。替え刃がセットになった商品がいいと思います。
ピラニア鋸
大きな木材を切るのではないけれど、ちょっとした切れ端を切りたいという時に便利な鋸です。ホームセンターで売っています。
木の切れ端はレイアウトの柱などに加工できます。アルタイル・ハーミテージの高架の台はほとんどこれで作られました。
ある程度大きさのある木や、量をたくさん切る場合には、これでなく電動のこぎりを購入した方が良いです。
電動ドリル
レイアウトを作る時までは不要です。
大きな板に穴を開けたり、電動ドライバーとしてネジを締めたりするのに使用します。
電動「ドリル」ですが、だいたいは先端のビットと呼ばれる部品を交換することで、ドリルにも電動ドライバーになるように作られています。
ビットはセットで買った方がお得です。穴の直径は、3mm〜6mmくらいものがあればちょうどいいと思います。
1mm以下のものすごく細い穴を開けるときには、下にある「ピンバイス」という道具を使います。
ピンバイス
手動でとても細い穴を開ける器具です。1mm以下の穴を開けられるので、車両やストラクチャーの工作にも使います。
ただ、絶対に必要というものでもないので、ストラクチャーとかを作り始めて必要になったときに買えば良いと思います。
数百円から販売されています。
ホットボンド
専用のスティックを装着して、電気で暖めて溶かし、ジェル状に流し込んで固めるタイプの接着剤です。
ネジ止めできないようなパーツを固定するのに使います。
Cトラックの裏側に基板を止めたりするのに便利ですが、それほど使用頻度は高くないので、なくても構わないと思います。
見た目もべちゃっという感じであまり綺麗ではないので、見えない裏方で活躍する接着剤です。
リューター(ルーター)
リューター(ルーターとも言います)は小さな電動のドリルで、研磨したり削ったりするのに使います。ほとんどが模型用かガラス細工用なので模型店で手に入ります。
電池で稼働するものと、コンセントから電源を取るものがありますが、モバイル性能が必要なわけではないのでコンセントタイプがいいと思います。
電動ドリルと同じで先端のビットを交換でき、ビットによって様々な加工ができるようになります。メルクリンでは研磨よりも切断と削りに使いますので、ビットもそういう用途のものを揃えた方が良いです。
Cトラックのセンターレールなど塗装がされているような部位には、そのままではハンダが付かないので、その部分を削る時には必須になります。
ストラクチャーの製作にも使用する時があります。
ガチ勢なら、高性能のリューターがお勧めです。
下記の動画内の「コンタクトセンサーの作り方」内で紹介しています。
レーザー距離計
名前はすごいですが、要するに単純なメジャーです。ただし、金属や紙で伸ばして測るタイプよりも圧倒的に使いやすいです。
レーザー距離計はレーザー光線を飛ばして距離を正確に測るタイプのメジャーです。
よく不動産屋さんや左官屋さんが持っていますが、普通にホームセンターでも買えます。
かなりの精度で、数メートル離れていてもmm単位で測れます。また、光が届けばどこでも測れるので、天井までの高さや川の向こう側の柱といったメジャーではなかなか測れない位置のあるものの間でも測ることが出来ます。
レイアウトの土台の設計をする際には、部屋の大きさや設置位置、高さなどを正確に計測する必要があるのであった方が良いでしょう。
鉄道模型でなくても、家具の設置場所やカーテンの大きさ、間口の幅など、日曜大工的なシーンで大活躍します。お父さんの魅力を高めるためにもあって良いものだと思います。
ハンディタイプの掃除機
小型の掃除機です。
これがかなり便利で、工作で出た細かいくずもすぐ吸えますし、模型の掃除も出来ます。簡単な部屋掃除も可能です。
電池タイプ(コードレス)とコンセントタイプ(コードあり)がありますが、充電が不要で動作時間の長いコンセントタイプでいいと思います。
サードパーティーから掃除機用の各種アタッチメントが発売されていて、これを付けると車両の埃も簡単に吸い取ることが出来ます。
レールの掃除にも活躍しますが、レールの掃除はレール掃除機カーもあるので、そちらを使っても良いです。私は高架の下など手に入りにくい部分は掃除機カーで、その他の部分は掃除機で掃除をしています。ただ、掃除自体はめったにしないので、たまにする時には、ですが。