【運転パターン】列車を停車させよう

停車は最大の見せ場です

列車を停車させるというのは、最も基本にして最も重要な要素です。
列車の動きはとても単純なので、停車や発車が多く盛り込まれていないと、ただ走っているだけの鉄道模型になってしまいます。

メルクリンでは列車を停車させる方法は複数あります。
それぞれの方式と特長の違いを認識して上手に使い分けましょう。

シャトルトレインで停車させる

機関車のシャトルトレイン機能を使って停車させます。
シャトルトレイン機能はセンサーをトリガーにして働きますので、必ずセンサーが必要になりますが、センサーがあれば設定は非常に簡単で、自動で駅に停車させたり、自動往復運転をすることができます。
停車時間も秒数で指定することが出来ますので、手軽にぱっと停車させたい時などには便利です。

しかし反面、センサーがオンになったタイミングにしか反応できないことや、停車時間の長さを個別には変えられないといったデメリットもあります。
シャトルトレインだけではどうしても動きが単調になってしまうので、レイアウトの一部に組み込むか、信号機などと組み合わせて使う方が良いでしょう。

実際の動きを動画で見てみましょう。 比較するために、すべての動画で同じ列車を同じ速度で走行させています。

シャトルトレインの場合には、センサーが『オンになった時』にのみ停車命令が発信されます。
そのため、駅での停車位置を細かく調整することは難しいです。

センサーのタイプにもよりますが、サーキットを使っている場合には、編成中のシューの位置によって停車位置が変わってしまいます。
特に長い編成で、端の方にシューがある場合(一般的な客車編成などの場合)には、列車の進行方向によって停車位置が大きくずれるため、あまり実用的とは言えません。短い編成や常に同じ列車が走行している場合にのみ、サーキットでも運用可能になると思った方がいいでしょう。

コンタクトを使っている場合には、編成の状況に関わらず一定の位置で停車させることは出来ますが、シャトルトレインはセンサーが『オン』になった時のみにしか反応できないため、編成の後部がどういう状況になっているのかを判定するためには、別のセンサーなどが必要です。
編成の長さが変わるような場合には、ホームからはみ出していても停車してしまう場合がありますので、事故にならないように注意してください。

この動画では、長い駅のホームの手前にセンサーが設置されているため、ホームにさしかかってすぐに停車してしまいます。
短い編成なら大丈夫ですが、長い編成の場合にはホームの中央よりも先頭側にセンサーを設置する必要があります。

メモリーで停車させる

バージョン3.5.16以降のCS2ではメモリー機能が大幅に強化されているため、停車だけでなくかなり複雑なことができます。
また、設定をがんばればセンサーや信号機がなくても停車させることができますので、使い道は広いです。
もちろんセンサーや信号機と組み合わせて使うことも出来ます。

ただし、特定の列車に対して命令を出すという方式のため、列車ごとに設定が必要になります。
またレイアウト上の列車を交換したり、位置を変えたりすると、その度にメモリーの設定も変更しなくてはならず手間がかかるというデメリットがあります。

実際の動きを動画で見てみましょう。
メモリーの場合には、発動条件と設定内容を細かく指定できますので、詳細な動作を設定することが出来ます。

シャトルの時との違いは、センサーが『オフ』になった時をトリガーにして、列車を停車させている点です。
センサーは待避線が分岐するポイントの直後からホームの端までの間に設置されているため、センサーがオフになるタイミングは『編成全体がホームに入りきったタイミング』になります。そこからブレーキをかけるので、ホーム有効長以内の長さであれば、どのような長さの編成でも必ずホームに停車させることが出来ます。
編成の後尾がポイント上に停車することもないので事故も起きにくいです。
ただし、ホーム有効長以上の長さがある編成の場合には、ホームより先方向に列車がはみ出しますので、その状態で隣の待避線の出してしまわないような対策は別途必要です。

また、センサーが『オン』になった時に一度減速しておき、『オフ』になって編成が入りきってから停車させることで、駅に進入する際にゆっくりと入線して止めるという実感的な動きを再現することが出来ます。

このやり方は、『オン』になった時に減速命令を出して、その後ディレイさせて停車させるという『オンの時だけメモリーを発動させる』方法と、
『オン』で減速して『オフ』で停車させる(さらにディレイしても良い)という方法の2通りのメモリーの書き方ができます。
安全性や確実性では、『オン』で減速して『オフ』で停車させる方が、様々な長さの編成に対応できて良いです。

このメモリーによる停車の実例は、メルクリンショップHRSさんのレイアウトでいつでも見ることが出来ます。
HRSさんの最外周線では、『オン』になった時に減速命令を出して、その後ディレイさせて停車させるという、オフを使わない方式を採用しています。
理由は走っている列車(ICE 8両)が長すぎて、待避線の有効長ぎりぎりだからです。停車した際に編成最後尾がポイントギリギリで、センサー上に乗ったまま停車させないと収まりきらないため、オフのタイミングが使用できないのです。
ただ、HRSさんの最外周線の場合には、普段はICE以外の列車は走っていない(お客さんが車両を買ったときなどにテスト走行線になる)ため事故が起きないので良いのですが、2台の列車を交互に出しているような場合にはやや危ういです。

信号機で停車させる

メルクリンが得意とする王道的な方式です。アナログ時代から信号機を付けるだけで、列車を停車させることができるというのは、メルクリンの設計の優秀さを感じます。
一番の特長は、信号機を赤にしておけば、すべての列車を必ず停車させることが出来るということです。
赤で停車させた列車は、信号機を青にすると元の速度で再び走り始めます。
機関車側の設定は、ブレーキモジュールを併用している場合のみ減速遅延を調整する必要がありますが、ただ止めるだけなら設定は不要です。
列車を変えても必ず停車させられるので、様々な列車が走っている線路や駅では重宝します。

問題は必要な数だけ信号機を購入する必要があることと、ブレーキモジュールを付けた場合には配線が非常に煩雑になってしまうことです。

実際の動きを動画で見てみましょう。

センサーがオンになった時(=駅に進入したとき)に、入線番線の信号機を赤にして、そのまま信号機の手前で停車します。
何かの条件で分岐させて、信号機を青にしたまま駅に進入すれば、その駅は通過にすることも出来ます。
信号機を青にするか、赤にするかだけを切り替えれば、列車に関係なくすべて信号機の手前で停車させることができるので、非常に便利です。

ただし、ホーム有効長以上の長さがある編成の場合には、ホームより後ろ方向に列車がはみ出しますので、その状態でポイントを切り替えてしまわないような対策は別途必要です。
※この場合、ポイントは「センサーがオフになったら(=編成がホームに入りきったら)切り替える」という書き方をすれば、はみ出している時には切り替わらないので事故になりません。

信号機による停車の実例も、メルクリンショップHRSさんのレイアウトでいつでも見ることが出来ます。

状況に応じて使い分ける

3種類の停車方法の違いの表

 シャトルメモリー信号機
必要な機器センサー特になし信号機
センサー連動可能
タイミング
オンのみオン/オフ両方可能オン/オフ両方可能
有効長以上の
編成があった場合の
はみ出し方向
シューの位置によりバラバラ。オンとオフの違い、遅延時間の設定等による。
オフタイミングの場合には前方向にはみ出す。
後ろ方向にはみ出す。
長所設定が簡単。パターン化がしやすい。複雑な操作を組み合わせることが出来る。全列車を止めることが出来る。
短所汎用性に乏しい。他と比較して設定が面倒。他と比較して設備と配線が必要。

ハイブリッドな方法も可能

基本はこの3種類なのですが、ハイブリッドな方法として、
・シャトルと信号機を組み合わせる
・信号機とメモリーを組み合わせる
・m84デコーダーを使ってアナログ信号機とメモリーを組み合わせることで、ストラクチャーとして信号機の灯火を点けながら、滑らかに停車させる
などの方法もあります。

例えば、折り返し駅でシャトルで向きを変えておき、発車までは信号機を赤にしておけば、シャトルで設定されている停車時間とは関係なく、好きなタイミングで列車を発車させることができます。
また、発車はメモリーで行い停車は信号機で行うことで、発車時にはアナウンスなどの複雑なアクションを入れつつ、停車は定位置で確実に行うことも出来ます。

停車方式はレイアウト全体でひとつに統一しなくてはならないということはないので、実際にはパターンを組み合わせて大きなレイアウトにしていきます。
こちらの動画は、実際にイベントで走行させたレイアウトの試験走行の時の様子です。

レイアウトの大きさは横約3.5m、縦約1.6mです。R5の曲線を使っているので、実際には縦幅はもっと狭く作ることも出来ます。
様々な列車が走ったり止まったりしていますが、最外周の周回は信号機で、中線の周回(2両の赤い列車の線)はメモリーで、内側の周回(客車列車と黄色いディーゼル機関車)はシャトルで、引き込み線の停車はシャトルと信号機のハイブリッドで停車させています。

走行パターンは、最外周が2列車が交互に反対向きに発車、中線が駅から発車して途中駅に停車、1周して向きを変えて発車を繰り返します。
内側はディーゼルはセンサーで向きを変えているだけですが、客車列車は少々複雑で、引き込み線から出てきて、駅に停車して、次の周回では駅を通過し、その次に停車した時に向きを変えます。その後、もう一度駅に停車して、引き込み線に戻り、別の列車と交替します。
イベント本番では、ストラクチャーなども設置したので、メモリーを使ってもう少し複雑な動きに変更して走行させましたが、基本パターンは同じです。

音を鳴らしたりなどのアクションもセンサーで行っていますが、このレイアウト全体で、信号機は4カ所、センサーはすべてコンタクトで9カ所、切り替えが必要な(デコーダーが組み込まれいてる)ポイントは2カ所しかありません。他の機器はS88とK84とラジカセを1個ずつ使っています。
CS2の周囲は配線が集中しているので、少しごちゃっとした感じがしますが、機器はそれほど多くないので、この規模でも十分お座敷レイアウトで運行できます。

実際のイベントでは室内の会議テーブルを6個使って、当日組み立てました。
レールの組み立てとセンサー等の配線、全線の試運転は、私一人だけで実施しましたが、試運転完了までにかかった時間はちょうど1時間でした。
ひとつひとつの動きは単純に思えますが、組み合わせることで、休日にリビングに広げることも十分可能な範囲で、ここまで複雑な運転を組むこともできるのです。